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シリーズ「仏教のひみつ」第3回
禅の修行が目指すもの〜修行道場のリアルな1日

シリーズ「仏教のひみつ」第3回
禅の修行が目指すもの〜修行道場のリアルな1日
お寺情報, その他 全国
2018/09/14

前回は、「足し算の自分」という認識がいかに危ういものかというお話をしました。

今回はその続きのお話なのですが、ちょっと寄り道をして、「禅の修行生活」のリアルな実態について紹介したいと思います。

「禅の修行生活」のリアルな実態〜永平寺

「禅の修行生活」のリアルな実態〜永平寺

私は福井県にある大本山永平寺で1年間の修行生活を送ってきました。

平成10年の3月から平成11年の3月までで、365日きっかり1年です。

ちなみに曹洞宗は他の宗派に比べて修行期間が長めに規定されています。

曹洞宗のお寺の住職になるための資格(これを教師資格といいます)は、学歴と修行歴の掛け合わせで厳格に決められていて、例えば私のような大学学部卒の僧侶は福井県の大本山永平寺、横浜鶴見の大本山總持寺、もしくは全国各地にある認定修行道場(全国に約30か所あり、山形では鶴岡の善宝寺(人面魚で有名になったお寺)がこれに当たります)で、最低で半年以上修行しなければなりません。自分のお寺でいくら一所懸命に修行したといってもこの日数にはカウントされず、住職になるには必ず公式の修行道場に入門しなければなりません。

この修行期間を無事終えると、2等教師という資格がもらえます。これは一般的な寺院の住職になれる資格で、格式の高い寺の住職になれる資格を得るためにはもっと長い期間の修行が必要になります。また高校卒業や中学卒業の学歴だと、もっともっと長い期間の修行が必要になります。


では、この修行期間、一体何をしているのかというと・・・

禅の修行=普通の生活?

禅の修行=普通の生活?

修行道場の朝はとても早く、夏は3時半、春秋は4時、冬は4時半が起床時刻です。

起床するとまず衣を着て、歯を磨き、顔を洗います。

その後、朝の坐禅を組みます。時間は40分。

坐禅が終わると、お袈裟を着けて本堂に行き、朝課(朝のお勤め)を行います。読経は約1時間、長い時だと2時間以上なることもあります。

読経が終わると朝食の時間です。朝食は玄米粥と沢庵漬け、ごま塩です。日によっては梅干しが出ます。

朝の食事が終わると掃除の時間です。雑巾をもって集合し、一斉に拭き掃除を行います。これが終わるのが大体8時、ここでいったん休憩です。

その後、午前の時間は修行僧がそれぞれの部署に分かれて、与えられた仕事にあたります。(食事を作る係、鳴らし物の合図などを担当する係、法要を務める係、参拝者の案内係、宿泊する方のお世話係など)特に配役の仕事がない修行僧は、草むしりや庭掃除をします。

お昼になると読経し(これは短く15分位)食事を摂ります。

昼食は麦飯と汁物、沢庵漬けとおかず1品程度です。(精進料理です)

食事が終わると、午前と同様に、決められた部署の仕事にあたります。

夕方になると読経し(これも15分程度)、夕食の時間になります。

夕食は混ぜご飯などと汁物、おかずが1〜2品です。(これももちろん精進料理です)

夕食がおわると、夜の坐禅。(40分を2回)

坐禅がおわるのは9時ちょうど。その後就寝時間になります。

どうでしょう。皆さんが想像していた「修行生活」と、結構違うのではないでしょうか。

「なんだか、普通・・・」と思った方、正解です。

つまりは

起きる→歯をみがき顔を洗う→坐禅→読経して朝ごはん→掃除して仕事→読経して昼ごはん→仕事→読経して夕ごはん→坐禅して寝る

の繰り返しで、朝が早い事と坐禅、読経以外は「普通」の生活とあまり変わらないんです。

皆さんが想像する「滝に打たれる」「断食」「火渡り」などの修行は一切ありません。

では、この普通の生活がどうして修行になるのか。

ここに禅の修行観の大きな特徴があります。

宇野 全智(うの ぜんち)

昭和48(1973)年、山形県生まれ。山形大学理学部生物学科卒業。曹洞宗の布教師養成機関(現在の曹洞宗総合研究センター教化研修部門)修了後、大本山永平寺で一年間の修行生活を送る。曹洞宗総合研究センター研究員、職員等を経て現在、同センター専任研究員。曹洞宗の教えを分かりやすく伝えるための企画・開発を手掛け、曹洞宗の本部、各支部が主催する僧侶・寺族向け研修会の講師などを務める。また曹洞宗公式サイト「曹洞禅ネット」の企画運営や、一般向け各種講演会、研修会、坐禅会、写経会等の他、曹洞宗「こころの問題」研究プロジェクトリーダーとして、被災地支援活動、自死遺族支援活動にも関わる。

著書「禅と生きる ―生活につながる思想と知恵 20のレッスン 」など