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シリーズ「仏教のひみつ」
第14回:坐禅の「調心」を活かし、日常の「負のスパイラル」から離れる

シリーズ「仏教のひみつ」
第14回:坐禅の「調心」を活かし、日常の「負のスパイラル」から離れる
お寺情報 全国
2020/05/15

前回は、坐禅の「調心」が、いわゆる「無心」とは違うことを話しました。

 

身体感覚を「感じないようにする」ことは、土台無理ですし、もし出来たとしてもそれは禅の修行の目指すものではありません。

生きている以上、身体感覚は有って当然のものです。

 

同じように食欲などの欲望も、生き物として当然持っているものであって、それを無くそうとするのは見当違いです。

 

ただし欲望は、野放しにすると苦しみを生み出します。

重要なことは、感じないようにするよりも、適切にコントロールする術を身に付けることです。

 

感情も同様です。

 

人間として生きるうえで切り離せないものですが、不用意に増幅させることのないようにコントロールしていく必要があります。

 

 

日常生活は思考の連鎖で成り立っている。

日常生活は思考の連鎖で成り立っている。

私たちの日常生活は思考の連鎖で成り立っています。

 

これは物事を効率的に進めていくために必要です。しかし一方で連鎖する思考は、人のクセに左右され、迷いや苦しみを生み出したりもします。

 

日常生活で何かが起こったとき、それは例えば不愉快な出来事や不本意なトラブルであったとします。

 

その起こった事柄を受けて生まれる感情は、連鎖反応で次々と怒りや悲しみなどの感情を増幅させることがあります。

「第一の矢」から

「第二の矢」

「第三の矢」と

負のスパイラルに飲み込まれていくことは少なくないのです。

 

感情の連鎖、またこの連鎖を生み出す思考のクセから、いったん離れてみる経験はとても重要で意味があります。

 

禅の「無心」のイメージは、聞こえたこと、感じたこと、思い浮かんだ事柄を、そのままに流していくことです。聞こえる音を聞こえないようにと考えるのではなく、音が聞こえたなあと流します。カラスが「カァ」と鳴く声が聞こえたなら、「カァだなあ」と、右から聞こえてきた音が左の耳から抜けていくように。

 

身体感覚も同じで、暑いと思う感覚も空腹感もそのまま流していく。

肝心なのは、留めず、淀みない流れの中に流していくことなのです。

 

そうしてあるがままの空気をそのままに感じる。あるがままの音をそのままに聞く。

 

あるがままの自分の感覚を、そのままに味わう。

計らいから自分を解き放ち、素直にそのままを感じる。そんな経験が、「無心になる」価値でもあります。

筆者の過去の記事

シリーズ「仏教のひみつ」第13回:誰でもできる簡単な坐禅 その3 心を「ととのえる」〜坐禅で「無心」になれますか?

・シリーズ「仏教のひみつ」第12回:誰でもできる簡単な坐禅 その2 呼吸を「ととのえる」〜静かに、ゆったりと呼吸することが「穏やかな心」につながる

・シリーズ「仏教のひみつ」第11回:誰でもできる簡単な坐禅 その1身体を「ととのえる」〜人生を調える第一歩は、身体を調えることからが始まる。

シリーズ「仏教のひみつ」第10回:坐禅を通じて理想の姿勢を考える外側から見る「整う」から内面で感じる「調う」へ

・シリーズ「仏教のひみつ」第9回:人生は張り過ぎず、緩めすぎず 〜お釈迦さまと坐禅

・シリーズ「仏教のひみつ」第8回:坐禅って、厳しいんですか?

シリーズ「仏教のひみつ」第7回:禅の修行が目指すもの〜修行道場で1年間修行して、何が変わったの?

・シリーズ「仏教のひみつ」第6回:禅の修行が目指すもの〜修行生活を過ごして感じた、正直な感想 

・シリーズ「仏教のひみつ」第5回:禅の修行が目指すもの〜どうしてウソをついてはいけないの?

・シリーズ「仏教のひみつ」第4回:禅の修行が目指すもの〜修行を積むというけれど・・・

・シリーズ「仏教のひみつ」第3回:禅の修行が目指すもの〜修行道場のリアルな1日

・シリーズ「仏教のひみつ」第2回:禅の修行が目指すもの〜あなたは一体何者ですか?

・シリーズ「仏教のひみつ」イントロダクション

宇野 全智(うの ぜんち)

昭和48(1973)年、山形県生まれ。山形大学理学部生物学科卒業。曹洞宗の布教師養成機関(現在の曹洞宗総合研究センター教化研修部門)修了後、大本山永平寺で一年間の修行生活を送る。曹洞宗総合研究センター研究員、職員等を経て現在、同センター専任研究員。曹洞宗の教えを分かりやすく伝えるための企画・開発を手掛け、曹洞宗の本部、各支部が主催する僧侶・寺族向け研修会の講師などを務める。また曹洞宗公式サイト「曹洞禅ネット」の企画運営や、一般向け各種講演会、研修会、坐禅会、写経会等の他、曹洞宗「こころの問題」研究プロジェクトリーダーとして、被災地支援活動、自死遺族支援活動にも関わる。

著書「禅と生きる ―生活につながる思想と知恵 20のレッスン 」など