はじめに:日本国内の伝統仏教の各教団はいわゆるシンクタンクを持っています。シンクタンクと申しますと日本では「三菱総研」「野村総研」「日本総研」などが例えば挙げられますでしょうか。そこでイメージされるのは、データを収集分析し資本主義経済(あるいはグループ企業の益)をドライブする政策を提示するエリート集団のようなもの。といえばちょっと露悪的に聞こえますがそう遠くないと思います。さてそうすると仏教と相容れない雰囲気漂いそう?いやいや。要は「Think(考える)の入ったTank(貯水槽)」と見るとなるほどそれは極めて仏教っぽさが漂ってきますよね。そも、たかだか近代150年を遡らない金融系グループに〇〇総研があるのなら、東洋哲学の至高の書「正法眼蔵」を擁する鎌倉800年の実践派インテリジェンス集団「曹洞宗」にこそあって然るべきではないでしょうか。
というわけで。仏教コラムシリーズseason1は曹洞宗総合研究所の宇野全智さんにお願いしたところ快く受けていただきました。第0回 イントロダクションから。はじまります。
・時代は空前の「禅」ブーム
最近、若者や外国人を中心に、禅が大きなブームになっています。きっかけは実はよく分からないのですが、スティーブ・ジョブズが禅僧に師事して坐禅をしていたこと、またシリコンバレーを中心に、主にIT関連企業の技術者、経営者の間で坐禅が流行っていることなどが影響しているようです。国内では、曹洞宗や臨済宗の寺院を中心に坐禅会は長く行われてきましたが、どちらかと言うと年配の、そして男性の参加者が多いのが実情でした。そして男性でも特に「禅マニア」「仏教オタク」の参加者の割合が多く、一般の方には敬遠される印象がありました。それがここ数年は若者や女性を中心に「坐禅を組んでみたい!」という人が増え、特に都市部の坐禅会などは定員を大幅に上回る参加申込みがあります。私が東京で運営している坐禅会も同じような状況です。坐禅だけでなく、「禅の思想」や「修行体験」なども人気があり、座学を中心とした「禅セミナー」や、禅堂の生活を疑似体験する「修行道場体験」なども、募集開始ですぐに満席ということも少なくありません。
・人生を「普通」に過ごすための「禅」
禅の修行は、特別な立場の人間が、特別な能力を身につけるためにするものではなく、「普通の人間」が「普通」に、でも「確か」に、そして、「安らか」に生きていくためのものなのです。「禅は普通を目指す」と聞くと、何だか拍子抜けしたと思うかもしれません。「なあんだ、普通か・・・」とがっかりする人もいるでしょう。でも、本当は普通が一番大事。普通の生活、普通の毎日こそが一番の幸せなのだと、大きな災害を経験したり、病気やアクシデントを経験をする毎に、少しずつ分かってくるはずです。禅の教えと実践には、あなたの人生を普通に、でも確かに幸せに生きるための大切な気づきや知恵がたくさん詰まっています。このコーナーでは、その一つ一つを紹介しながら、あなたの人生に役立つ形で提示できればと考えています。
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